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讃岐うどん談義|おか泉交流録

第7回 長尾 順二氏

お客様と店主という関係から始まった地域ぐるみの深い交流
店主岡田と

 讃岐の他の地方でもそうでしょうが、この中讃地方も何かことある度にうどんを食べる風習がありました。祭りの前の宵祭りの時、家々の法事の席でのお参りの時などに出されるしょうがとネギとゴマだけの湯だめうどんのうまさは、子ども心にも忘れられません。そんなわけで、1日に1回はうどんを取ることが成人してからも続いています。

 高松の附属小学校へ勤務している期間が23年間もありましたので、高松のうどん店もあちこち廻りました。親しい人たちと飲んだ後は、必ずうどんで腹をおこしていました。中でも「かな泉」は、最もよく寄る店のひとつでした。

 「おか泉」さんのお店を知ったのは、坂出の書店の横にあった時がはじめです。店名が「かな泉」とよく似ているので、本屋を覗きに行ったついでによく寄らせてもらいました。手打ちうどんのコシと喉ごしの良さ、上品なダシの味わいは本格的なものでした。

ご自宅の茶室で

 そのうちにご主人の岡田さんとも話をするようになり、宇多津に店を出すようになるということを聞き大変うれしくなりました。

 その後、高松の附属小学校から出身地である宇多津小学校の校長を経て、宇多津町の教育長を務めさせてもらうようになりました。岡田さんご一家も、宇多津北小学校の近くに移住されておいででした。そのうちにお嬢さんの教育のことなどにもご相談に乗るようになり、宇多津のことも色々話題にしてお茶の稽古なども時々ご一緒するようになりました。

 そんな折のことです。平成16年に地域の子どもとのふれあいの機会を増やすため、岡田さんにお願いしてすぐ近くの北小学校で生徒たちに手打ちうどんを教えてもらうことになったのです。うどん教室にはおか泉従業員の他、宇多津町の老人会の方々も何人か一緒に参加しました。

 初めてのうどん作りの機会に驚かされたことは、岡田さんが完全主義であるということです。何度も忙しい中を学校へ行かれて、会場のこと、用具のこと、仕事の手順のことなどを打ち合わせされ、当日にはグルーブ毎にふ分けをした材料や、手順の掛け図なども用意されていたことです。うどん作りの仕事の合間に、材料や道具の置き方やしまい方まできちんと指導されており、参観させてもらった私たちも大変勉強になりました。もちろん今は、老人会の一員として一緒に子どもたちとうどん作りをさせてもらって、茹で上がったばかりのうどんの美味しさを「おか泉」から持参されたダシでいただける楽しみを堪能させてもらっています。

 「おか泉」のお店の方も何人かいて細かい所まで指導してくれますので、大いに助かります。子供たちはもちろん大喜びで自分たちが作りあげた「本格手打ちうどん」に舌鼓をうちながら自慢そうに話し合っていました。子どもたちもあのうどんの味とともに、一生忘れられない思い出になったのではないでしょうか。今では、うどん体験学習は毎年行われる北小学校の授業の一環として定着しております。

 この度、世界一周ワールドクルーズのゲストシェフとして「おか泉」様が選ばれたことは、何よりうれしく思っています。讃岐うどんを世界に知ってもらう何よりの機会です。日本を代表するうどんとして「おか泉」の活躍と発展に期待しています。

うどん教室でおか泉のスタッフ・老人会の皆さんと

長尾 順二氏のご紹介

1931年1月宇多津町生まれ。香川大学高松附属小学校の教諭・副校長、宇多津小学校の校長を歴任後、1991年から宇多津町教育長を4期12年務め、退任後は宇多津町老人会の会長に就任する。趣味の映画には極めて造詣が深く、地元FM局では映画コーナーを担当。宇多津映画祭の主催者でもある。また茶道もたしなまれ、茶号は「宗順」。2005年7月に瑞宝双光賞を叙勲されている。

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