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讃岐うどん談義|おか泉交流録

第9回 神渡 良平氏

超豪華客船「飛鳥II号」で提供された岡田さんの讃岐うどん
店主・岡田と

 「おか泉」の岡田文明さんとの出会いは、もうかれこれ六年ほど前でしょうか。坂出市に講演に来たとき、主催者の方が「出色のうどん屋があるので、お連れしましょう」と案内されたのがきっかけでした。「おか泉」は自動車が頻繁に走る国道沿いの小さなお店ながら、他のお店とはひと味もふた味も違うお店でした。

 ご主人の岡田文明さんを紹介され、お目にかかったところ、「この人は味に命をかけている方だな」と感じました。商売として讃岐うどんを提供されているのではなく、修行としてうどん打ちをされている方だなと思ったのです。

 だから色紙を揮毫(きごう)するよう依頼されたとき、私は迷わず宮本武蔵の座右の銘だった「万象はわが師」と書きました。それが岡田さんの心境にぴったりだと思ったからでした。

 その後、イエローハットの創業者である鍵山秀三郎相談役にお会いしたとき、岡田文明さんの話が出たので、私がそう申し上げたら、まったく同感だとおっしゃっていました。

 今回岡田さんは、世界一周旅行を楽しむ日本郵船の超豪華客船「飛鳥(あすか)II号」に同乗し、お客様に「おか泉」の讃岐うどんをお出しして欲しいと依頼され、バミューダ海域の大西洋上で五回お出しされたとお聞きしました。

おか泉にて

 以前私の友人が「飛鳥II号」の船長をやっており、船に乗ってもらう料理人をどうやって厳選しているか、聞かされたことがあります。二千万円から三千万円もの旅費を出して乗船されている、舌が肥えた方々を満足させる料理を提供するというのは並大抵のことではありません。 当然各地で評判の有名料理店に足を運んで吟味して決めておられるそうです。そうして一流の料理人に白羽の矢が立つわけなので、今回岡田さんがそれに選ばれたというのは画期的なことです。味が一流ということもさることながら、うどん打ちを修行として取り組んでいる岡田さんだからこそ、選ばれたのだと思います。

 私の読者も昨年四人ほど、「飛鳥II号」で世界一周の旅に参加しています。あるいはこの人たちも船上で岡田さんが提供する讃岐うどんに舌づつみを打ったことでしょう。聞くところによると、岡田さんの讃岐うどんは大好評で、今年(2011年)も乗船して提供してほしいという依頼が来ているそうです。

 そんな評判の讃岐うどんを私たちは超豪華船に乗らなくても味わえるわけですから、こんなに幸せ者はありません。

神渡 良平氏のご紹介

1948年鹿児島県生まれ。九州大学医学部中退後、様々な職業を経て、38歳の時に脳梗塞で倒れ右半身不随に。その闘病生活の中で「人生は一回しかない」ことを骨の髄まで知らされる。懸命なリハビリにより社会復帰を果たすも、その時の「貴重な人生をとりこぼさないためにはどうしたらいいか」という問題意識が、作家となった現在、重低音のように全作品に流れている。代表作に『安岡正篤の世界』『安岡正篤人間学』(共に同文館)、『宇宙の響き-中村天風の世界』『地湧の菩薩たち』(共に致知出版社)、『一隅を照らす人生』『人は何によって輝くのか』『春風を斬る・小説山岡鉄舟』(共にPHP研究所)、『マザー・テレサへの旅路』『野に在る覚者たち』(共にサンマーク出版)、『安岡正篤にみる指導者の条件』『生き方のヒント』(共に大和出版)などがある。
神渡良平のホームページ http://www008.upp.so-net.ne.jp/kami/

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