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おか泉さんとの出会いは平成14年。同窓会に出席するため20数年ぶりに帰省した私は、両親に「香川で一番旨いうどんを食べさせてくれ」と頼みました。で、連れていかれたのがおか泉さんだったのです。
「そこで食べたうどんの美味しかったこと!」
食事が終わると東京へのお土産に、大量のうどんに買い込みました。私の経営するワインバーには、「食」にこだわるお客様が大勢いらっしゃいます。その方々に「これを食べさせてみたい」と思った食材、それがおか泉さんのうどんだったのです。こんな思いがわき上がる出会いは久しぶりのことでした。
その後当店ではこちらのうどんを、ご常連のお客様にいわゆる「裏メニュー」として振舞ったり、季節のご挨拶として「半生うどん」を取り寄せ、お送り致しておりました。しかし「遠慮なくオーダーしたいからお店のメニューにのせてほしい」というお客様の熱望に負け、ついに平成18年、世界中の超高級ワインを扱う私の店のメニューに「讃岐うどん」が登場したのです。
私の経営するワインバーは世界中の名醸ワインを揃えております。提供するお料理は、ワイン・シャンパンに合うもの、例えばキャビア、フォアグラ、エスカルゴ、最高級の和牛など。その中に一行「讃岐うどん」が佇んでいるわけですが、逆に異色さが目をひくようです。
「おか泉」さんの半生うどんを使ったメニューは、原則としてシンプルな「ぶっかけ」でお出ししています。ネギ、生姜、卵黄の使用はお客様のお好みで。うどんに卵黄を落とすと、ボルドーの赤ワインと絶妙な関係になります。またローヌやカリフォルニアのスパイシーなワインにあわせる場合は「釜玉」にしてみたりと、ケースバイケースで当店のソムリエ達がアドバイスを申し上げているようです。
しかしながら当店においてうどんの最も重要な位置付けは別の所にあります。消化が良好でしかも口当たりも良いうどんは、パワフルなワインや油っぽいお料理の後で、西洋文化に疲れた胃袋と心を癒してくれるのです。
私見として、関東の食文化にはうどんより蕎麦のほうがあっていると思っていました。私も香川に住んでいたころはうどんは欠かせなかったのに、東京で暮らすようになってからは蕎麦ばかり食べていたのです。正直なところ、東京では旨い讃岐うどんは食べたことがありませんでした。銀座にも「讃岐うどん」屋さんはありますが、あまり魅力を感じたことがありません。生意気なことを言いますが、東京の「讃岐うどん」屋さんはトッピングに拘りすぎていて、「うどん」そのものの味がおろそかになっているような気がするのです。その点では蕎麦や「稲庭うどん」の方が、数倍まさっていると思います。麺そのものの味を前面に出せば、もっと魅力的な食べ物になる、と気付かせてくれたのはおか泉さんのうどんでした。銀座は世界一の美食の街です。トッピングをいくら工夫しても「うどん」そのものの味がいまひとつではメジャーにはなれないでしょう。
歴史と文化を守りつつ、旨いものを追求するおか泉さんの姿勢。これは世界中のワインファンの持つ、美食に対しての終わりなき欲望と通ずるところがあるのです。
1963年生まれの北川氏は、香川県の三木町で育ちました。高松商業高校を卒業後、大学進学のため上京。25歳の時にソムリエ職に就き、2001年独立。現在銀座にてワインバー「アムルーズ」を経営されています。常時1200種以上ものワインが揃うお店には、財界・政界・芸能界から名のある美食家多数訪れます。またお父様は、香川短期大学名誉学長を務められています。
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